監修:
東京大学大学院医学系研究科 腎臓・内分泌内科 教授 南学 正臣 先生
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 講師 加藤 秀樹 先生

非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)とはどのような病気ですか?

非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、補体の活性化が制御できなくなることで起こる病気で、大人と子どもの両方で発症します1.2

aHUSは、とてもまれな遺伝性の病気で、治療が難しく、場合によっては生命をおびやかす可能性のある病気です。aHUS患者さんでは、腎臓、心臓、脳などの生命の維持に重要な臓器の障害が生じる可能性があります2.3

aHUS患者さんの約半数は大人ですが、子どもでも発症します1.2

私たちの体には、体内に侵入した細菌などの外敵を攻撃して感染症などから体を守る免疫システムがあります。この免疫システムの一つに血中に存在する「補体」があります。「補体」は細菌などの外敵の侵入に備えて、自動車に例えるなら常にエンジンがかかった状態(アイドリング状態)になっており、アクセルとブレーキのような役割を果たしている「補体制御因子」によってきちんとコントロールされています。
ひとたび細菌などの外敵が体内に侵入すると、ブレーキは解除されて、アクセルが踏み込まれることで「補体」は活性化し体内に侵入した外敵を攻撃します。このように「補体」は体内に侵入した外敵を攻撃するのに重要な役割を果たしています。
補体制御異常による aHUS は、この「補体」の活性化をコントロールするアクセルとブレーキの役割を果たしている「補体制御因子」に遺伝子の変異などがあるために起こる病気です。この病気の患者さんでは、アクセルとブレーキが上手く作動しないので、「補体」がたえず活性化した状態になります。

免疫システムの一つである「補体」は細菌などの外敵の侵入に備えて常に「アイドリング状態」になっている。

「補体」の活性化をコントロールするアクセルとブレーキの役割を果たしている「補体制御因子」が上手く作動しないと、自分自身の細い血管の内側の細胞(血管内皮細胞)を攻撃してしまう。

aHUS患者さんでは、補体系の制御異常により、全身性の血栓性微小血管症(TMA)と呼ばれる状態が起こります。補体の活性化を制御できない状態になると、血管の内側の細胞(血管内皮細胞)が傷つけられます。血管内皮細胞が傷つけられると、血小板が過剰に活性化され、全身の細い血管で血のかたまりである血栓が形成されます。

血栓によって血流がさまたげられると炎症(腫れ)が起こり、さらに他の臓器にも血栓が移動してさらなる障害を引き起こし、TMAが発症します4.5.6

  • 免疫システムの一つである補体系の制御異常により、血栓の形成や炎症が起こります。
  • 血栓の形成や炎症の結果、細い血管が傷つけられます。
  • 全身の細い血管が傷つけられた状態をTMAと呼びます。
  • TMAにより、腎臓などの生命の維持に重要な臓器に障害が生じる可能性があります。
炎症は、外傷や病原菌の侵入などの刺激を受けたときに体に起こる反応を指します。炎症が起こった場所では、免疫にかかわる細胞や成分が集まり、腫れや発熱などが起こります。 筋肉が使われたときにできる老廃物の一つで尿中に排泄されます。腎臓の機能が低下していると排泄できずに血中のクレアチニンの量(血清クレアチニン)が増えるので、腎臓の機能を評価する指標として用いられます。 血液のうち、淡黄色の液体部分です。赤血球、白血球、その他のさまざまな成分が含まれます。 血液を特別な機械に通して血漿のみを取り除き、新しい血漿と入れ替える治療法です。 血中にある成分の一つで、出血などをしたときに血管の傷口に集合し、血液を固めて出血を止める働きをします。補体制御異常によるaHUSでは、血管の内側の傷に反応し、血管の中で集合してさまざまな血中の成分とともに血栓をつくります。 血液は、赤血球などの血球成分と、血漿と呼ばれる液体成分で構成されています。血漿療法は、 病気の原因となるものが血漿に含まれているときに行われる治療法で、血漿交換や血漿輸注などがあります。 新しい血漿を輸血のように点滴注射する治療法です。 血栓は、血管内で血液が固まったものです。通常、切り傷や外傷を負ったときに血液が固まって出血を止めます。しかし、時としてこのようなかたまりが静脈や動脈の血流を遮断し、危険な症状を引き起こすことがあります。補体制御異常によるaHUS では、全身の細い血管に多数の血栓ができることによって重大な合併症が起こる場合があります。 TMAは、全身の細い血管で多数の血栓が形成される病態を指し、「血小板数の減少(血小板減少症)」「微小血管障害性溶血」「臓器の障害」といった症状が現れます。 大腸の下部。 腎臓は体の老廃物を尿中に排泄する役割を持っています。透析は、腎臓の働きが低下した末期腎不全(ESRD)の患者さんの血液を人工的にきれいにする治療法です。 脳の障害。脳の動脈が詰まったり出血したりして、その障害が起こった部分に血液が供給されなくなると発症することがあります。 「変則的」、「定型でないもの」という意味。 補体制御異常などさまざまな病因により血栓性微小血管症(TMA)が引き起こされ、溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害などの症状が現れます。 水分が過剰に存在することで起こる、体の一部の「むくみ」のことです。 遺伝物質の不可逆的な変化を指します。 免疫システムの一つであり、血中に存在します。健康な体では「補体」は細菌などの外敵の侵入に備えている状態になっており、「補体制御因子」によって上手くコントロールされています。 体内に侵入した細菌などの外敵を攻撃して感染症などから体を守る免疫システムです。 免疫にかかわる補体が過剰に活性化して自分自身の細胞を傷つけることがないように制御する因子です。複数の補体制御因子があります。 補体の活性化を抑制する役割を持つ補体制御因子の一つ。
補体の活性化によって自分自身の細胞を傷つけることがないよう、
補体活性化をコントロールしています。
体内に侵入した細菌などの外敵を攻撃して感染症などから体を守るシステム。 体内にある特定の細胞やタンパク質を標的として認識し作用するよう設計された特殊なタンパク質。